●相談者 34歳 女性
 私は大の面食いです。私自身、男性には大変好かれる顔立ちで、別にブスのコンプレックスで、いい男を連れ歩いて自慢したいわけではありません。
 美男子とでないと食事もおいしくなく、愛の営みも楽しくないからです。たいしておいしくない料理でも、いい器だとおいしく感じるのと同じです。自分の好きな顔の男性と付き合えている分、相手にお金が全くなく、大変です。今まで付き合ったイケメン男性には結婚を迫られた女性に首を絞められたことを自慢する性格の悪い人や10年付き合った女性に1円も出さず、ホテル代も全部女性が負担したという人もいました。
 結婚に憧れないから結婚願望はありません。ある結婚ハウツー本には、「面食いはアイドルの追っかけに専念して不細工な男と結婚しろ!」とありました。演歌歌手のおっかけおばさんを見たことがあるけれど、現実の男性に相手にされないから追っかけをやるのでしょう。先日、海外モデルがゲストのパーティーに参加し、会場がざわついたイケメンモデルに見とれていると、彼は私に気づいてウィンクされました。うれしい気持ちと同時に「こんなことをされるのも、もうじき終わりか!?」と思ったりします。最近は私は白髪が生え始め、肌つやもなくなってきました。長い目で見ると面食いは損なのでしょうか?
 ○回答者 歌手・俳優 美輪明宏 見るだけにしておくのが身のため
 相談者は自分のことを「男性に好かれる顔立ち」と書いていますが、何を根拠に言っているのでしょうね。いま1人でいるようですが、本当に男性にもてていたら、1人でいるわけがないでしょう。性悪な男性は、女なら誰でもいいんですよ。そういう男性に一時もてたからといって、勘違いしてはいけません。海外のモデルが自分に向かってウィンクしてくれた? それが彼らの商売なんです。みんなにしているんです。あなただけじゃないんです。それでのぼせていたんじゃ、向こうの思うつぼでしょう。そんな自分をさておいて、芸能人の追っかけを馬鹿にしているようだけれど、芸能人も、それを追いかける人たちも人間なんですよ。追いかける対象が芸能人かどうかで差別し、優越感を持つというのはいかがなものでしょう。差別感情を持っているというのは、人間としては稚拙な精神年齢だということです。そういう人は一挙手一投足に、思いがにじみ出るでしょうから、不細工な人でも相手にしないでしょうね。自分がなんぼのものか知らず、イケメンにふさわしいとうぬぼれている。相手にとってはいい迷惑。迷惑防止条例にひっかかります。相手にも女性を選ぶ権利があります。
 そもそも「面食いは損ですか」なんて、白髪まで出てきた年齢の人間が口に出すような相談じゃないでしょう。アイドルや何かの追っかけをしている少女と同じようなレベルです。人間にとって、好きな服と似合う服は違います。色も、自分に似合う色と似合わない色がある。人は己を知り、「分相応」ということをわきまえていることが大切です。この方には「わきまえ」がない。気をつけなければいけないのは、「きれいなバラにはトゲがある」ということ。「きれいな男にゃわながある 知ってしまえばそれまでよ 知らないうちが花なのよ」という歌もありましたよね。きれいな女性に会社社長が引っかかって手玉に取られ、女が逮捕された事件もありました。水商売の男でも、寄生虫のように女の人からお金を巻き上げるイケメンがいます。「腐れ卵の“がわ”ばかり」と言うでしょう。外はきれいに見えても、中が腐っている。イケメン、イケジョは要注意の代物なんです。絵画鑑賞と同じように、見るだけにしておくのが身のためです。
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